掲載日:令和8年10月26日
厚生労働省は、令和8年10月26日、介護保険制度における預貯金などの確認作業について、負担を減らすための検討結果を公表しました。
今回の発表では、介護施設の食費や居住費を軽くする制度について、市区町村の事務作業を効率化する方法がまとめられています。
オンラインでの預貯金確認や提出書類の削減、認定証の有効期間の見直しなどが主な内容です。
介護保険には、所得や預貯金が少ない人を対象に、介護施設などでかかる食費や居住費の負担を軽くする「補足給付」という制度があります。
この制度を利用するには、本人や配偶者の所得、預貯金などが一定の条件を満たしている必要があります。
市区町村は申請書や預金通帳の写しなどを確認し、必要に応じて銀行などに問い合わせて、制度の対象になるかを判断しています。
しかし、この確認作業には多くの時間と手間がかかるため、もっと簡単で効率的な方法が求められています。
厚生労働省は、全国の市区町村などを対象にアンケート調査を行いました。1,574の対象のうち、1,566から回答がありました。
調査では、次のような実態がわかりました。
オンラインによる預貯金確認を利用している自治体は、回答した自治体全体の約13%にとどまっています。
そのため、オンライン化を広げることが、事務作業を減らすための重要な課題となっています。
現在、銀行などへの預貯金の確認には、紙の書類を郵送する方法と、オンラインで確認する方法があります。
今回の調査では、銀行などから回答が届くまでの平均日数に違いがありました。
オンラインを利用した場合、回答までの日数が平均で約8日短くなっています。
また、書類の印刷や郵送が不要になるため、職員の作業時間や郵送料などの削減も期待できます。
厚生労働省は、オンライン照会を導入した自治体の事例などを紹介し、利用を広げていくことが重要だとしています。
現在、補足給付を申請する際には、預金通帳の写しなどを提出することがあります。
しかし、長期間同じ施設に入所していて、預貯金が大きく変わっていない人に対して、毎年同じ書類を提出してもらう必要があるのかという課題があります。
実際に、一部の自治体では次のような工夫が行われています。
こうした取り組みにより、利用者や家族が書類を準備する手間を減らせる可能性があります。
ただし、すべての自治体で提出書類が不要になるわけではありません。必要な確認を行いながら、自治体ごとに対応を検討することが求められています。
補足給付を受けるための「負担限度額認定証」は、一般的に毎年更新が必要です。
そのため、利用者や家族は更新のたびに申請書を提出し、市区町村も確認作業を行う必要があります。
今回の調査では、29の自治体が有効期間を2年間とする運用を行っていることがわかりました。
このうち27の自治体が、事務作業の負担軽減につながったと回答しています。
主なメリットは次のとおりです。
一方で、有効期間中に所得や預貯金が変わった場合の対応が必要になるなどの課題もあります。
そのため、すべての自治体で一律に2年間へ変更するという内容ではなく、地域の状況に合わせて判断することが重要とされています。
申請のために市区町村の窓口へ行くことが難しい高齢者や家族もいます。
そこで、郵送やマイナポータルなどを使ったオンライン申請を広げることが提案されています。
郵送やオンラインで手続きができれば、役所に行く負担を減らすことができます。
また、自治体の窓口が混雑することを防ぐ効果も期待されています。
今回の資料では、AIやRPAなどのデジタル技術を使った業務の効率化も紹介されています。
RPAとは、パソコンで繰り返し行う作業を自動化する仕組みのことです。
具体的には、次のような取り組みが挙げられています。
これらの取り組みによって、職員が同じ情報を何度も入力したり、書類を一つずつ処理したりする負担を減らすことが期待されています。
厚生労働省は、介護に関する情報を関係者間で共有できる「介護情報基盤」の整備も進めています。
介護情報基盤では、介護保険の資格情報や要介護認定の情報、ケアプランなどを共有し、手続きを効率化することを目指しています。
本格運用は令和10年(2028年)4月1日から予定されています。
今回の検討では、将来的にこの仕組みを活用して、紙の負担限度額認定証を発行する必要がなくなるようにできないかという意見も出されています。
ただし、認定証の廃止が決まったわけではなく、今後の運用状況を見ながら検討していく段階です。
今回の取り組みが広がれば、介護施設の利用者や家族、施設職員にとってもメリットが期待できます。
一方、今回の資料は、主に市区町村の事務作業を改善するための検討結果をまとめたものです。
利用者の自己負担額や預貯金の基準が、今回の発表によってすぐに変更されるというものではありません。
厚生労働省が公表した「介護保険最新情報 Vol.1550」では、補足給付に必要な預貯金などの確認作業を、より簡単にするための取り組みが紹介されました。
特に注目したいのは、オンラインでの預貯金確認、通帳などの提出書類の削減、認定証の有効期間を2年間とする運用、AIやRPAを活用した業務の効率化です。
これらはすべて全国で一律に実施されると決まったものではありませんが、各自治体が今後の業務改善を進めるうえで参考になる内容です。
介護施設の職員や利用者の家族にとっても、申請や更新の手間が減る可能性があるため、今後の自治体の対応に注目していきたいところです。
詳しい内容については、厚生労働省の公表資料(介護保険最新情報 Vol.1550)をご確認ください。