掲載日:令和8年10月26日
厚生労働省は、介護保険の手続きで必要となる預貯金(銀行などに預けているお金)の確認について、自治体の仕事や利用者の負担を減らすための改善策をまとめました。
今回の発表は、介護施設の食費や居住費を軽くする制度に関係するものです。
全国の市町村へのアンケート結果をもとに、オンライン化や書類の削減など、手続きを簡単にするための方法が紹介されています。
介護保険には、所得や預貯金が少ない人を対象に、介護施設などでかかる食費や居住費の負担を軽くする「補足給付」という制度があります。
この制度を利用するには、収入や預貯金などが決められた条件に当てはまる必要があります。
そのため、市町村は申請した人の収入や預貯金を確認し、必要に応じて銀行などの金融機関にも問い合わせています。
しかし、この確認には多くの書類や時間が必要で、市町村の職員だけでなく、申請する本人や家族にとっても負担になっています。
なお、令和6年度末時点で、この補足給付の対象として認定されている人は、全国で約85万人います。
厚生労働省は、全国の市町村などを対象に、預貯金の確認に関するアンケート調査を行いました。
調査では、次のような結果がわかりました。
この結果から、預貯金の確認をオンラインで行う仕組みは、まだ十分に広がっていないことがわかりました。
今回の調査で特に注目されたのが、銀行などへの問い合わせをオンライン化する方法です。
従来の書類などによる問い合わせと、オンラインによる問い合わせでは、回答までにかかる日数に違いがありました。
つまり、オンラインで確認した場合、回答までの時間が平均で約8日短くなっていました。
オンライン化が進めば、書類の印刷や郵送の手間を減らせるほか、郵送料や印刷費の節約にもつながります。
厚生労働省は、オンライン照会を導入した自治体の事例などを紹介し、利用を広げていくことが重要だとしています。
介護施設の利用者が補足給付を申請するときには、預貯金を確認するために通帳のコピーなどを提出する場合があります。
しかし、毎年同じ書類を提出することは、利用者や家族にとって大きな負担になります。
そこで、一部の市町村では、次のような工夫を行っています。
厚生労働省は、正しく審査できることを前提に、こうした取り組みを各市町村でも検討することが考えられるとしています。
ただし、すべての市町村で通帳のコピーが不要になるわけではありません。実際に必要な書類は、お住まいの市町村に確認する必要があります。
補足給付を利用するための「負担限度額認定証」は、一般的に毎年更新する手続きが行われています。
しかし、毎年の更新には、利用者・家族と自治体の双方に負担がかかります。
そこで、一部の市町村では、認定証の有効期間を2年間にする運用が行われています。
今回の調査では、29の自治体などが2年間の運用を実施しており、そのうち27が仕事の負担を減らす効果があったと回答しました。
主なメリットは次のとおりです。
一方で、2年間の途中で収入や預貯金が変わった場合には、給付額の修正などが必要になることもあります。
そのため、厚生労働省は、それぞれの市町村の状況に合わせて導入を検討することが必要だとしています。
手続きを簡単にするため、郵送やインターネットからの申請を活用する方法も紹介されています。
例えば、国が提供する「マイナポータル」などを使った電子申請です。
こうした方法が利用できれば、市町村の窓口へ直接行かなくても、申請できる場合があります。
特に、高齢者本人が外出しにくい場合や、家族が仕事などで窓口に行く時間を確保しにくい場合には、負担を減らすことにつながります。
ただし、利用できる申請方法は自治体によって異なります。
今回の資料では、AIやデジタル技術を使って、市町村の仕事を効率化する方法も紹介されています。
具体的には、次のような取り組みです。
これらの取り組みによって、職員の仕事を減らすだけでなく、利用者が申請書を書き間違えたり、必要な書類を忘れたりすることも防ぎやすくなります。
国は現在、介護保険に関する情報を関係者の間で共有できる「介護情報基盤」という仕組みの整備を進めています。
この仕組みは、令和10年(2028年)4月1日からの本格運用が予定されています。
今回の資料では、介護情報基盤を活用することで、将来的に負担限度額認定証の発行をなくし、紙の書類を減らせないかという意見も紹介されています。
ただし、認定証の廃止が決まったわけではなく、今後の運用状況などを見ながら検討していく内容です。
今回の取りまとめは、主に市町村の事務作業を効率化するためのものですが、介護施設や利用者・家族にも関係があります。
例えば、申請書類の削減や認定証の有効期間の見直しが進めば、施設職員が利用者や家族の申請を手伝う際の負担も減る可能性があります。
また、郵送やオンライン申請が利用しやすくなれば、窓口に出向く負担も小さくなります。
ただし、今回の発表によって、全国一律に申請方法や認定証の有効期間が変更されるわけではありません。
介護施設の担当者は、施設がある地域や利用者の保険者となる市町村からのお知らせを確認することが大切です。
今回の厚生労働省の発表は、介護保険の補足給付に必要な預貯金の確認について、正確さを保ちながら、手続きを簡単にしていくための中間的な取りまとめです。
特に注目したいのは、オンライン照会の活用、通帳コピーなどの書類削減、認定証の有効期間の見直し、AIによる事務作業の効率化です。
これらの取り組みが広がれば、市町村の職員だけでなく、介護サービスを利用する人や家族、介護施設の職員にとっても、手続きの負担が軽くなることが期待されます。
今後、各市町村がどのような取り組みを進めるのか、引き続き確認していくことが大切です。
詳しい内容については、記事冒頭の厚生労働省の資料をご確認ください。