出典:厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1436」
掲載日:令和7年11月7日
厚生労働省は、介護施設などでの事故を防ぐための新しい指針「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」を作成しました。
高齢者の要介護度が上がったり、認知症の方が増えたり、介護現場の環境が変わってきたことを受けて、これまでの内容を見直したものです。
このガイドラインでは、事故を防ぐ方法や、事故が起きた時の正しい対応をまとめています。
介護の目的は、高齢者が自分らしく生活できるように支援することです。
そのためには、事故を「完全になくす」よりも、「できるだけ防ぐ工夫」と「起きたときの正しい対応」が大切です。
介護施設は生活の場でもあるため、転倒や誤嚥(ごえん)などの事故は起こりうるものです。
職員や家族がその事実を理解し、事前にリスクを共有することが重要です。
ガイドラインでは「リスクマネジメント(危険管理)」を強化することが大切だとしています。
リスクマネジメントとは、事故を防ぐための準備と、事故が起きたときの正しい対応を決めておくことです。
施設全体で取り組み、管理者や職員が協力して安全な体制をつくることが求められています。
・事故を防ぐためのルールや手順書をつくり、職員全員で共有すること。
・「事故防止委員会」を設置し、事故の分析や改善を行うこと。
・定期的な研修を実施し、事故防止の意識と知識を高めること。
・介護テクノロジー(見守り機器や記録システムなど)を上手に使うこと。
・家族や医療機関と連携し、利用者一人ひとりの状態を把握すること。
「ヒヤリ・ハット」とは、「危なかったけれど事故にはならなかった出来事」のことです。
こうした情報を職員全員で共有・分析することで、次の事故を防ぐことができます。
ガイドラインでは、小さな気づきを大切にし、施設全体で改善することがすすめられています。
介護ロボットや見守り機器、記録用ソフトなどのテクノロジーも事故防止に役立ちます。
たとえば、見守りセンサーで転倒を早く発見したり、移乗支援機器で職員と利用者のケガを減らすことができます。
ただし、機器に頼りすぎず、職員の判断と組み合わせて使うことが大切です。
介護施設での生活は「共同の生活の場」です。
そのため、事故が起こる可能性があることを事前に家族と共有し、理解してもらうことが重要です。
家族と信頼関係を築き、情報をオープンにすることで、安心して利用できる環境を作ります。
このガイドラインは、介護の現場で働く人たちが「安全」と「自立支援」を両立させるための道しるべです。
事故をゼロにすることは難しくても、みんなで学び合い、改善を続けることで、高齢者が安心して暮らせる環境を守ることができます。
ガイドライン全文は厚生労働省のウェブサイトで読むことができます。
「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」
問い合わせ先:厚生労働省 老健局 高齢者支援課
TEL:03-5253-1111(内線3929)